2002年5月 ”VATICANO”(ヴァチカン)
私の好きな本の一冊、それは「VATICANO ヴァチカン 〜 ローマ法王、祈りの時」(文:南里空海・写真:野町和嘉・出版:世界文化社)です。カトリックの教徒でもない私が、何故この本を手にとったのか。それは表紙の写真に惹かれたからでした。ローマ法王の祈りを捧げる姿がとても美しかったからです。ハードカバーで2cmほどの厚みがあるこの本は、その内容の半分が写真です。美しいヴァチカンの街並み、修道女の姿、数々の建築物や彫刻、そしてローマ法王の姿が映し出されています。
ヴァチカンは、イタリアのローマ市内にある世界最小の独立国です。総面積は日比谷公園の約三倍、その国の周囲はレンガの壁で囲まれています。一回り歩いたとしても、1時間とかからないほどの小さな国です。しかしながら、10億人を越えるとも言われるカトリック信者の頂点に立つこのヴァチカンという国、そして、ローマ法王の存在、これは世界の歴史の中で非常に大きな影響力を持ってきたのです。
2001年、第三千年紀、この特別な年を迎えるにあたり、ローマ法王は就任からずっと「われを赦したまえ」と祈り続けてきました。これまでの教会の過ち、犯した罪を認め悔い改め、そして諸宗教間の対立を深め、和解をして新しい世紀を迎えたい、と。ローマ法王の動きは、実は世界の大きな出来事に連動しています。ベルリンの壁の崩壊、冷戦の終結、そして、朝鮮半島を分断した一線からの和平への歩み、これらはいつもその背景にローマ法王の平和を強く求める姿勢がありました。
この本が出版されたのは2000年、取材は1999年から2000年にかけて、大聖年の扉が開かれる少し前からです。
ちなみに、その1999年の12月25日、その重要な意味を持つミサは、日本の琴の音から始まったそうです。そしてその曲は「サクラ」。「法王は日本がお好きだから。」ヴァチカン関係者はそう語っています。法王の出身国であるポーランドでは、日本のことを「桜咲く国」「日出ずる国」と親しみを込めて呼ぶのだそうです。法王は日本のことをとても正しく理解されているのだとか。法王のスピーチは様々な言語で話されるのですが、その日本語はとても流暢で美しいと言われています。残念ながら私はそのスピーチを聞いたことがありませんが・・・。このことを知って、遠い存在であったローマ法王は、私の中で何だかとても身近に感じられました。
ローマ法王は、ユダヤ教、イスラム教を「別れた兄弟」と呼んでいます。そうです。元々、これらの宗教は唯一絶神を信仰する一神教でした。いつの間にか・・・。これらの宗教は分離、そして対立し、今もなお激しい紛争が続いています。昨今のパレスチナとイスラエルで起きている件に関して、ローマ法王のコメントが新聞に掲載されていました。非常に小さな記事でしたが、この本を通してローマ法王の人柄を少しばかり知り得た私には、ローマ法王の哀しみが感じられました。ローマ法王はきっと今も祈りを捧げているのだと思います。
ローマ法王、ヨハネ・パウロ2世。就任は1978年、その人生は決して平坦ではなかったようです。この本の著者は最後にこう締めくくっています。「ジャーナリストは絶えず中立でなければいけない。しかしこの本がローマ法王に偏り過ぎているという批判があるとしたら、それは私が取材を通して、法王の人柄、魅力、そのカリスマ性を実感し、また、命がけで和への道を模索している姿に心打たれたからである。」と。
私も、この本を紹介したいと思ったのは同じような理由です。この本の魅力、そして、ヴァチカンとローマ法王の魅力は、これだけの文章では決して伝えることが出来ないと思っています。
何度も読んだ本ですが、今この時期にまた手に取りました。表紙の深い祈りを捧げる姿に、心癒される想いです。この祈りが決して無駄にはならない世界であって欲しいと願っています。
#これを掲載しようとしていたところで、アラファト議長解放のニュースが入ってきました。一刻も早く無事に解決し、犠牲者が出なくなることを祈るばかりです。
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