2000年11月 子供を妬む母親(隠された心の声>
何とかしたいと思っていて、なかなか出来ないことは誰にでもあるのではないでしょうか。
二人の小学生のお子さんを持つある女性が、「仕事を持っているので、なかなか子供の話を聞いてあげられない」、「ついつい、子供に辛くあたってしまう」、ということで悩んでいました。もっと子供に優しくしたい、学校や友達の話を聞いてあげたい、そうは思っているのだけれどいつもいつも同じことの繰り返し、子供のために何とかしたい、そう考えていました。
彼女が選択したのは、ヘルスカウンセリグでした。気付きと癒し、行動変容のためのカウンセリングです。そこで彼女の本当の心理を探り出すと、彼女の幼い頃の心傷体験が浮かび上がってきました。彼女が本当に母親に甘えたかった時、彼女のお母さんのお腹には二人目の赤ちゃん(彼女の妹)がいました。幼い頃からおとなしく、聞き分けの良い子だった彼女はお母さんをいたわり、自分本当の心をずっと隠していました。
今の彼女はこう叫んでいました。「私が小さかった頃は、母親が大変そうなのを見て、ずっとガマンしてきたわ。どうしてあの子達はそれが出来ないのかしら。何であの子達はガマンしなくていいのかしら。」
相談当初の彼女の気持ちは「子供のために」であり、「仕事が忙しいから出来ない」ことに対する不満も持っていました。もちろん、それは嘘ではなく本心でしょう。しかし、カウンセリングをすすめていくうちに、本当の彼女の心理(無意識の部分)が明らかになりました。彼女は、私だってそうやって子供の頃を過ごしてきたのだから(あなた達もガマンしなさい)、そう思っていたのです。
彼女が幼い頃に受けた心の傷(心傷体験)は、成長するに従って無意識の部分に埋め込まれました。そして、本人の自覚がないままにある特定の心理パターンを作り出しました。自分の思いが果たされなかったために、その思いを遂げようと実行している他者を妬み、怒る、「ねたみの心理パターン」です。
心理パターンは「ねたみ」の他にも、「償う」、「巻き込む」、「諦める」などなど、数多くあります。そして、誰にでも存在すると言えます。原因があり、その結果として起こす特定のものではなく、自分ではよくないとわかっていても何故かそうなってしまう、そういった場合には、ほとんどが「心傷体験」によって形成されています。これは個人の性格とも呼べそうですが、本人がやめたいと思い悩んでいて、そのことで心身に極度のストレスがかかる場合には、やはりきちんとした対処が必要でしょう。
「心傷体験」は、無自覚のうちに現在の自分の生活に影響を与ます。類似したような状況になると、それを無意識に避けようとしてある行動を引き起こしたり、癒されていない過去の自分を紛らわすために、ある行動を続けさせたり、そうして、それが少しずつ日常生活に支障をきたすようになります。
これが自分ではいけないと思っていてもやめられないこと、直そうと思っていても直せないこと、などにあたるのです。「本当は飲みに行くのは好きではないのだけれど、誘われるとつい行ってしまう」、「自分の仕事だけで手一杯なのに、人に頼まれると断れないので引き受けてしまう」といった精神にかかわるものから、「ダイエットをしたいのに間食がやめられない」、「たばこがやめられない」などの行動にまで及びます。
彼女は、カウンセリングによって自分の本当のニーズに気付きました。何故、自分が子供の話を聞いてあげられないのかとういことを正確に把握しました。そして、癒されなかった過去の自分を癒し、少しずつですが、今の自分の行動を変えることが出来るようになりました。このように「気付き」を促し、癒し、行動を変容させ、問題解決のための支援をするカウンセリングはヘルスカウンセリングと呼ばれています。
カウンセリングというと「身の上相談」のようなイメージをお持ちの方も多いと思いますが、本来は、相談をしたり、アドバイスを受けるものではありません。「今、自分にとって何が問題となっているのか」、「自分は何を実行すれば良いのか」をきちんと把握し、自らで必要な行動を取り、問題を解決する、それを支援するのがカウンセリング(ヘルスカウンセリング)です。自分で納得し、決定するのですから、誰かにうながされたり、すすめられたこととは違い、その後の生活や人生にもずっと引き継がれていきます。同じような場面に遭遇しても、次からは自分一人で正しい判断、行動が出来るようになります。
今月は、最近とても印象に残った30代の女性のお話を取りあげました。こういった心理パターンによる悩みやストレスを抱えている人は、本当に多いと感じています。そしてまた、自分ではどんな心理パターンにはまっているのか気付かないために、問題が長引いてしまったり、悪化してしまったりする人もいるというのが現状です。
「あれ?何かおかしいな」そう感じた時は、自分が自分に対してサインを出しているのです。それは行動や身体の症状のように目に見えるものかもしれませんし、心の中だけで感じる目に見えないものかもしれません。でも、少しでも何か違う、そう気付いた時には、ゆっくりと自分と向かい合い、客観的に見つめることの出来る「時間」や「環境」を、一人でも多くの人に持って欲しい、そう思います。
そして最後に・・・
警察の不祥事や医療ミスの頻発、また、多くの業界でも不信感がつのっています。
その他にもストレスフルとなった今の世の中、「セルフケア」というのは非常に重要なキーであり、また有効な手段でもあると思います。
従来の「コンプライアンス行動」(まかせきりの医療)は、崩壊しつつあります。これからは様々なシーンで「セルフケア」が必要とされてくると言えるでしょう。
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